『ぱいくんとぱいちゃん おっぱいのてんし』

『ぱいくんとぱいちゃん おっぱいのてんし』

ほしこはる(作) 
みやがわよりこ(絵)
(文芸社)

“暖色が広がる優しい世界”
おっぱい育児の楽しさと別れが沁みる絵本

推薦者:竹中恭子

なんて素敵な絵本だろう。
子育て中の頃の自分と子どもが、まるで空から神さまに見守られているみたい。
そう感じました。

赤ちゃんがおっぱいを飲んでいる時期(授乳期)の絵は2ページ目しか無いのに、日々繰り返していく何年にもわたるおっぱい育児の日常が、ページをめくっていくだけで目の前に広がっていくので、ドキドキします。

命を授かった頃の、少し恐れ多い感じ(妊娠中)。
身体の一部みたいに密着して毎日毎日飲み続ける日々に「いつまで続くのかな」「おっぱいを飲まなくなる日なんてくるのかな」と思う時期(絶賛授乳期)。

少しずつママから離れても平気になってきて、家族以外とのかかわりも増えてきて「おっぱい卒業しちゃうのかな」そんなうれしいような寂しいような、時期(卒乳が視野に入る頃)。

暖かい色のグラデーションとシンプルな絵からも、パイちゃんとパイくんのニコニコ笑顔からも、じわじわ伝わってくる優しいきもち。ほんの数ページなのに、シンプルな言葉なのに、読んでいると育児中の様々な思いが蘇ってきます。

作者のほしこはるさんは、心から子育てを楽しんだ人だったのだと思います。

自著の引用で恐縮ですが『おっぱいとだっこ』で最後に書いたことばを思い出しました。
~「おっぱい」と「だっこ」の次は手をつないで歩くことかもしれないし、ぬくもりが足りないといって子どもが戻ってきたら、また抱きしめてあげればいい。

愛し方は変わっても、「おっぱい」と「だっこ」は思春期へとつづき、さらにその先にどこまでもつづく道です。そして、そうした親子をささえるような社会であってほしいと思っています。~(『おっぱいとだっこ』竹中恭子著、村上麻里監修、PHP電子)

無垢な瞳が自分たちを見つめてくれている時期があっというまに過ぎ去ってしまうことを、メインで赤ちゃんの面倒を見てきた人(ママとは限りませんが)も、赤ちゃんのまわりにいる人たちも知っています。

だからこそ、ジワるパイちゃんパイくんとの出会いと別れ。

「この子のこと、必死に守ってきたつもりだったけれど見守られていたのは私の方だった」と気が付いて泣けてしかたなかった卒乳の頃を思い出しました。

プレママ・プレパパ、絶賛授乳中や卒乳悩み中のママ・パパ、卒乳が思い出になったママ・パパも。保育者さんも。病院の待合室や、育児支援の部屋、赤ちゃんにかかわるすべての人の傍らに、ぜひちょこんとおいてほしい絵本です。

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