⑤離乳食について

離乳食について:カルテ1

生後3ヶ月の赤ちゃんがいます。
母乳のみで育てていて、昼間は3時間おきの授乳、夜は6~7時間空いて、よく寝てくれます。4月から働こうと思っていますが、そのころ生後5~6ヶ月なので、一般的に離乳食を開始する時期だと思います。
みなさん、どうされていますか?
どういう生活リズムをとればよいのか教えていただけると助かります。これからのスケジュールが想像できずに困っています。

母乳110番より

母乳育児の場合、無理して早くから離乳食を始める必要はありません。始めてからも、母乳をやめて食事に切り替えるのではなく、母乳を飲ませながら食事もとっていく「補完食」がすすめられています。ユニセフとWHОが推奨している「ゴールドスタンダード」と呼ばれる方法です。

すずきともこ
「働きながら母乳育児を楽しむ20のヒント」より
(すずきともこマンガ 光畑由佳コラム NPO法人子連れスタイル推進協会発行)

食への興味が早い子も遅い子もいますので、ペースはちがいますが、みなさん、母乳をあげながら補完食をあげて生活しています。心配しないでくださいね。
幸い同じ市内で今度、母乳ママの集まりがありますので、そちらの情報も紹介します。

後日、「離乳食の開始時期の質問で電話をかけたのですが、ゆっくりお話を聞いていただくうちに、職場復帰をひかえ、『卒乳しなくてはいけないかも』と思いつめていた自分の気持ちに気がつきました。
実際に、母乳育児中のママたちの集まりにも行ってみて、働きながらの母乳育児のコツをいろいろ教えていただき、おかげさまで気持ちがラクになりました。ありがとうございました。」とのお礼状をいただきました。

離乳食について:カルテ2

生後8ヶ月半の赤ちゃんがいます。
1日に8~9回、母乳をあげています。体重は月に200グラム増えています。夜は2時間おきに起きて飲む感じです。おすわりとつかまり立ちはします。
離乳食はおかゆをあげていますが、スプーンを持っていくと口を開けるものの、あまり食べず、スプーンで遊んでいます。あげるならしっかり与える方がよいのでしょうか。柔らかさはドロドロにしているのですがこのくらいでよいのかどうか。
うんちにそのまま食べたものが出てくるのでちゃんとかめていない、消化していないのだと思います。もっと細かくしないとダメなのでしょうか。麦茶や白湯はあげるべきなのか?
離乳食は遅めにしたいと思っていましたが、6ヶ月のとき保健師さんに「離乳食どう?」と言われて「まだです」と答えたら「すぐに始めないとダメよ!」と言われてしまい、いやな気持ちになりました。「歯が生えてこないうちに、離乳食をするとあまりかまない子になる」と聞いたことがあって心配です。

母乳110番より

あまり食べなくて心配なのですね。お子さんは、きっと美味しいおっぱいをたくさん飲めていて、満足しているのだと思います。
もう少し赤ちゃんの口の中が発達してからの方が、無理なく食べるようになるかもしれません。「しっかり母乳もあげながら」少しずつ食べ物をあげていけば大丈夫です。

かめるようになるか気になるのですね。赤ちゃんがおっぱいを吸う口の動きは、かむ動きと同じだそうです。おっぱいを飲むことが、そのままかむ練習にもなっていて、お子さんはすでに練習ができています。おっぱいを飲んでいるお子さんの、こめかみを見てみてください。飲むときに動いていたら、かむ練習ができています。大人も、ごはんをかんでいるときにこめかみにさわると、動いています。
また、「歯が生えないうちに離乳食を始めるとあまりかまない子になる」というお話ですが、そんなことはないと思います。歯ぐきでかもうとしたりしますから。

うんちにそのまま出てくるということは、おかゆをかんでいないということですが、おかゆは、かむのがむずかしい食べ物です。大人でも、おかゆはやわらかくて、あまりしっかりとかめないですよね。また、おっぱいを飲む赤ちゃんは、乳首のかたさの物を好むそうです。おかゆより、ふつうに炊いたごはんをあげてみてください。そのほうがよく食べたりします。お味噌汁の具や、煮物(めんつゆなど、砂糖が入っていないものがいいです)を少しあげてもいいです。

母乳のお子さんは、歯ごたえのない、やわらかいおかゆや、すりつぶした食べ物は逆にあまり食べたがらないことが多いのです。
麦茶や白湯は、生後6ヶ月を過ぎているので、あげていいと思います。麦茶は体を冷やす作用があるので、夏にあげましょう。涼しい日や、冬は避けましょう。常温のお水もいいです。

子どもは大人のまねをするので、お子さんの前で、ごはんやおかずを楽しそうに、しっかりとかんでいる姿を見せてあげるのもいいです。

離乳食について:カルテ3

10ヶ月の赤ちゃんがいます。
離乳食はぞうすいなど、味のあるものが好きです。離乳食メインにして授乳を寝る前だけにしていたときはグチャグチャにしながらもけっこう食べたのですが、授乳の方をメインにするとあまり食べなくなってしまいました。
おっぱいが大好きで年中飲んでいる様子を見ると「1~2歳になってもこの調子で大丈夫か?」などと心配になってしまいます。授乳を減らした方がよいのか?食後もおっぱいをあげて大丈夫なのか?お聞きしたいです。

母乳110番より

授乳を減らす必要はないと思います。タイミングも食事の前にあげても後にあげても大丈夫です。食事の前後に母乳を飲む子もたくさんいます。母乳は消化を助ける働きがあるので、子どものおなかの健康にもいいです。今は母乳を飲ませながら食事も足していく「補完食」が推奨されています。ユニセフとWHОがすすめている「ゴールドスタンダード」と呼ばれる方法です。(カルテ1のマンガを見てください)。

お子さんにもよりますが、10ヶ月であれば、母乳がメインで食事は少量ということはよくあります。お子さんが元気そうであれば大丈夫ではないでしょうか。

それから1~2歳になると歩くようになり、活動量が増えてお腹がすき、食欲が出て食べるようになる子が多いので安心してください。1~2歳で母乳が大好きな子も、3歳ころには母乳より食べる量のほうが増えていきます。
また、お母さんの胸に抱かれてたっぷりおっぱいを飲んだ子は、心の中に安心感をたくさんたくわえることができます。おっぱいは心の栄養でもあり、生きる力や、優しく落ち着いた心を育てています。

離乳食について:カルテ4

1歳0ヶ月の赤ちゃんがいます。
夫は長時間勤務の仕事をしており、私はワンオペ育児をしています。子どもは母乳だけで育ち、9.5キロあります。
「この子は食べるのが好きじゃないのかな?」と思うくらい、離乳食をあまり食べません。食べる意欲がない感じです。3回食になったあたりから便秘になりました。
今は夜中に4~5時間、授乳間隔が空く感じです。お腹がすいて飲むというわけでもなく、ふにゃふにゃ言いながら寝てしまうときもあります。生後6ヶ月くらいからおっぱいは栄養がなくなると聞いて、おっぱいの間隔を空けて、がんばって食べさせようとしてきました。でも、あまり食べないのです。
体重が増えているから栄養は足りているのだとは思いますが、このままでよいのでしょうか。

母乳110番より

「生後6ヶ月くらいからおっぱいは栄養がなくなり、水のようになる」とはよく言われる言葉ですが、そんなことはありません。それは誤解なのです。母乳は、生後6カ月過ぎても、1歳を過ぎても、栄養や免疫が入っています。(「麻里先生に聞きました」を読んでくださいね)
ごはんを少ししか食べなくても体重がしっかり増えているのですから、母乳に栄養やカロリーがしっかりあるのだと思います。安心して母乳を飲ませてください。母乳の授乳間隔は、空けなくていいです。

また、便秘になったときは、消化能力を越える量を食べていた可能性があります。そういうときにも、母乳は消化を助ける作用があるので、お子さんが欲しがったら飲ませるほうがいいと思います。
食べ物は、大人が楽しそうに食べる姿を見せていれば、そのうちに興味をもってまねをして、食べる量が増えていくと思います。無理して食べさせようとすると、お子さんが食事をいやになってしまうことがありますので、いやがってるときは食事を下げて大丈夫です。お子さんが自分から喜んで食べるときを、待ってあげてよいと思います。

離乳食について:カルテ5

1歳1ヶ月の赤ちゃんがいます。
病気もほとんどなく丈夫で身体も大きいし、つたい歩きもしているのですが、ごはんを食べてくれません。最初のころ、口の中に入れたけれど欲しがらず、そのあとは、いやがって払いのけます。手づかみで食べさせようとしましたが、遊んでるだけで食べてくれず。今は食事させようとすると椅子にすわるのもいやがって拒否します。食習慣がつかないのが心配です。
周りが「離乳食を」「食事のしつけを」とうるさくて、自分でもあせる気持ちがありますが、その反面、「赤ちゃんの前では笑顔でいないといけないのに、無理にすわらせたり食べさせたりしてよいのだろうか?」という迷いもあります。
パパが食べさせようとしたこともあったのですが、「食べなかったよ」と私に子どもをわたしてきて頭にきました。
おっぱいはゴクゴク飲む感じではなく、甘え飲み?でしょうか、本気で飲んでいないような気がします。このままこんなに食べなくて大丈夫でしょうか。

母乳110番より

ママひとりで、がんばっていらっしゃるのですね。本当におつかれさまです。きっと、赤ちゃんは、食事がいやというよりも、食べ物を口に入れられる感覚が気に入らなかったのではないでしょうか?

「また口に何か入れられる」と思うから、椅子にすわるのを拒否するのだと思います。やわらかくて包みこむような感じの乳首を口いっぱいに含み、ごくごく飲む美味しい瞬間を今まで味わっていたのに、まったくちがう感触のものが入ってきたわけです。びっくりしたかもしれません。
また、自分から興味を持って口に入れたのであれば納得がいきますが、欲しがっていないときに口に入れられると、いやになってしまうことがあります。大人も、たとえ大好物でも、欲しくないときに口に入れられたら、いやな気持ちになりませんか。
そこで、今からできることは、お子さんに「食べ物を口に入れてごめんね、食べるのはゆっくりでいいからね」と声をかけ、食事の習慣を急がないことだと思います。3歳ころに習慣がついたらいいや、くらいの気持ちでどーんとかまえるのはどうでしょうか?人生は長いです。
お子さんの前で食事の時間は笑顔でいたいですよね。

子どもにだけ食べさせようとするのはやめて、大人が食事をするときに、同席させたり、椅子がいやなら、つかまり立ちでも、歩き回っていてもいいですので、近くにいさせましょう。子どもの前に食事を置いてもいいですが、無理に食べさせない。大人が「美味しいなあ」と大喜びで笑顔で食べる様子を見せることを心がけます。

もしお子さんが欲しそうな様子を見せたら、「あら。食べる?」とさりげなく聞いて、お子さんの前に食べ物をのせたスプーンを出してもいいです。でも、決して口に入れない。お子さんの口の3センチくらい前でスプーンを止め、お子さんが自分から首を動かしてスプーンに近づき、食べようとするまで待ちます。食べようとしなかった場合は、「あら。いらないのね。いいのよ。じゃあ、また今度ね」とスプーンを下げます。
そうしているうちに、だんだん、自分から興味を持つようになると思います。まずは、一口から。食べる経験、食べる練習と思って、ゆっくりすすみましょう。

また、お子さんは元気な様子ですから、おっぱいは飲めているのではないでしょうか?動き回っているのに、飲めていなかったら、やせてくるはずですから。

1歳前後はとくに、動き回って刺激を受けた分、落ち着きたくてママのおっぱいを吸うことがあります。おっぱいが心の栄養となっているのです。ひとしきりママの胸でおっぱいを飲んで安心すると、また動き回ったり、あるいは眠くなって寝たりしているのではないでしょうか。心の栄養の分、動き回るようになると一時的に授乳回数が増えることもあるくらいです。

お子さんが食事が楽しい時間だと思ってくれるように、しばらく時間をかけてみてくださいね。やがて、いやな記憶がうすれて、食べようとしてくれると思います。

離乳食について:カルテ6

1歳5ヶ月の赤ちゃんがいます。
ふだんは週5で保育園に行っていますが、今は子どもが体調をくずしたので職場を休ませてもらっています。以前はご飯やカボチャなどよく食べてくれていたのに(お肉や魚は食感をいやがりあまり食べない)、体調をくずしてから、おっぱいばかりになってしまいました。食事をまったく食べられなかったので、おっぱいを欲しがるだけあげていたら1時間おきに飲むようになってしまい、ずっと抱っこの毎日です。
職場に復帰してからも、こんなに食べないままだったらどうしよう?と不安です。保育園の先生からは「おっぱいをやめなさい」と言われています。

母乳110番より

そういうこと、ありますよね。体調のわるいときは、おっぱいばかりになって、「とても元の食生活に戻れそうにない」と思ったりするものです。
うちの子もそういうことがありました。お友だちの家でも、そういうことがあったと聞いています。

子どもが病気のときはおっぱいの回数が増えますし、治ってからも1ヶ月以上、その状態が続いたこともありました。でも、保育園にまた登園するようになれば、周囲の子どもたちのまねをして、ちゃんと前の生活リズムになるので大丈夫です。
仕事を休んでいることを考えると、あせってしまうかもしれませんが、気持ちを切り替えて、どうぞお子さんと一緒のおっぱい三昧の休暇を楽しんで過ごしてください。のんびりと昼間も添い寝でおっぱいを上げていていいと思います。

ただ、ママのおなかがすくと思いますので、栄養のある、おいしいごはんをたくさん食べてくださいね。だれかに作ってもらえるといいなと思います。とりあえずお米をたくさん炊いておにぎりにしたり、鍋いっぱいに具だくさんのお味噌汁を作って1日3回飲むのもおすすめです。テイクアウトや宅配を利用してもいいと思います。

保育園では、母乳育児への理解がないようで残念です。まだまだそういうことがありますが、だんだん理解が広まっていくことを願っています。

お子さんの体調がわるいときに、食欲がなくても、おっぱいで水分補給も病人食も兼ねられるわけですから、母乳は素晴らしい子どものお世話ツールでもあります。仕事をしていたらなおのこと、本当に助けられます。周囲の人に「やめなさい」と言われても気にしないで、堂々と続けてよいと思います。