成長に影響があるような母乳不足はどうやって見分けるの?
お母さんから「母乳が出ない」と言われた時、本当に出ていない、足りていないのでしょうか?3つのケースが考えられます。
① 母乳が足りないのではなく、自信が足りない
② 分泌不全:お母さん側の要因で分泌が少ない
③ 摂取不足:母乳は出ているが赤ちゃんが飲みとれていない
まずは、情報収集を!
「母乳不足で」「私のおっぱい、足りないみたい」「出てないみたい」という相談者に対して「あ、出ないのね」と言わないようにしましょう。うのみにせず、「心配ですよねえ、でもどうして出ていないと思うんですか」「困っているんですね、それで、足りてないと感じる理由は何かしら」と今の状態を聞くことが大切。相談員としてはもっとも基本においてほしいところです。
<母乳110番から>
約20年間の電話相談で常に相談内容ベスト3に入っているのが、この「不足感・不安」です。
「出ているか出ていないか、よくわからない」ことに加えて、「足りているかどうか、人に説明できない」、そのため「周囲の人に『母乳が足りていないのではないか』と言われた」、結果「ストレスと自信喪失でさらに不安になる」、この悪循環が多いです。
1. 「不足感」イコール「母乳不足」ではない
うまくいくようで、意外と問題なのは「まじめに記録している人」です。数字にとらわれて、全体の流れが見えていません。
「おっぱいの後に粉ミルクをあげたら何十ccも飲むから」「夕方からよく泣くし、1時間以上ずっと吸っているから」母乳が足りていないと思う、というママが多いですが、実は、これだけでは「母乳不足」であるとは言えないのです。
よくある「母乳不足感」の言葉
・飲んでも寝ない
・よく泣く
・3時間空かない
・張らない
・しぼっても出ない
・人工乳を与えたら飲む
・夜むずかる
・数時間飲み続ける
2. 「足りているか」の見分け方
母乳不足を考える状態は、赤ちゃん側から見ると
・生後2週間で出生体重に戻らない
・体重増加が500グラム/1ヶ月未満
・6ヶ月まで18~30グラム/日未満
・6ヶ月以降 8~16グラム/日未満
・授乳回数 1日に8回未満
・濃い色の尿が出る、尿の回数が少ない
*水分が十分とれていないと濃い尿になる。
・眠りがち、ぐったりしている
お母さんの授乳の状況からは
・1回40分以上かかることが多い
・10分以内にまた飲むことが多い
・おっぱいに痛みがある
ということがあげられます。
【体重だけでなく、全身状態を】
体重増加のペースがゆっくりであっても、「元気で、よく手足を動かし、目の輝きがある」赤ちゃんは母乳不足とはいえません。ワンポイントの体重だけで判断せず、経過を観察していきましょう。
【体重増加】
忘れがちですが、増加量は出生後いったん減った最低体重から、計算しましょう。(出生直後の体重からではなく)
増加の目安として、5~6ヶ月で出生体重の2倍、1年で3倍といわれています。
ただし母乳だけで育つ6ヶ月未満の女児は、母子手帳の成長曲線よりも小さめであることも多いです。
本当に成長に問題が起きる場合は、体重だけでなく、身長、頭囲の成長がみられなくなります。身長や頭囲の成長も、見ていきましょう。
【ほんとうの母乳不足】
母乳分泌不全
a)乳腺前性:ホルモン(胎盤遺残 シーハン症候群 疲労やストレスでオキシトシン低下など)、低栄養、脱水
b)乳腺性:乳腺低形成 手術後 放射線治療後
c)乳腺後性:母子分離
児の摂取不足
a)授乳姿勢、くわえ方が適切でない
b)授乳回数、時間を制限している
c)他のものを与えている
d)何かの疾患が隠れている
3. 見るべきポイント
【尿と便の回数】
・生まれて1~2日目は、おしっこが24時間に1~2回だけかもしれないが、3日目から4日目ごろから、布おむつなら6~8回、紙おむつなら5~6回ぬれる量のおしっこをする。
・便は初めの1~2日は緑色のタール状の胎便
・便は生後3日位から6週間まで1日に少なくとも2~5回
*ラ・レーチェリーグのインフォメーションシートより
母乳の88%は水分なので、きちんと飲めていれば尿が出ているはずです。
これが一番わかりやすい指標です。1ヶ月すぎでは便の回数はこれより減る子もいます。
まず、尿と便の回数や量を確認しましょう。
【間隔、回数】
母乳の授乳の間隔は平均1時間半~3時間、授乳回数は平均8~12回と言われています。母乳の分泌量を増やすために、もっと間隔が短く回数が多いこともあります。
飲ませるタイミングは、「泣いたらおっぱい」でよいのでしょうか?泣いてからではタイミングがおそいです。できれば大泣きする前に、欲しそうだったら何回でも与えて大丈夫です。ただし「痛い授乳」や「あまり母乳を飲みとれていない吸い方」の場合は、回数が多くても母乳不足になってしまうかもしれません。
授乳時間を制限すると十分に母乳を飲みとれない場合もあります。「授乳は5分5分(あるいは10分10分)で」と思いこんでいる場合などです。基本は赤ちゃんが満足するまで飲ませてよい、です。
授乳後半の母乳にはカロリーの高い脂肪分が多く含まれ、これが体重増加に役立ちます。味の変化は赤ちゃんにとって授乳終了のサインにもなります。
【姿勢はとても大切】
授乳がうまくできていれば、痛みはないはずです。
☆「どこか痛いところはありますか?」と聞きましょう。
乳房や乳首に痛みがある、肩こりがある、腰痛がある、という場合は、抱き方&くわえさせ方を変えた方がいい場合があります。
☆確認する方法:「赤ちゃんのおへそはお母さんの方を向いていますか?」
授乳の時に赤ちゃんのおへそがお母さんの方を向いていれば、正面からくわえていることになります。
赤ちゃんとお母さんの体がぴったりくっついていれば、深くくわえることができます。母子のお腹とお腹がしっかり触れ合った状態で授乳できているでしょうか。
また、抱っこして赤ちゃんの上唇が乳首と同じ高さに持ってくることも重要です。
授乳クッションに赤ちゃんを乗せ、お母さんが体を前かがみにした授乳だと、乳頭痛、肩こり、腰痛になり、赤ちゃんはしっかり飲みとれないので、母乳分泌を増やすことにつながりません。クッションに合わせるのではなく、自分のおっぱいに赤ちゃんを連れてくる感覚がわかると、自然な姿勢で、楽な授乳になります。体の痛みはなくなり、母乳分泌もよくなり、赤ちゃんの体重も増えてゆく、と好循環になります。
長く飲ませ続けると鉄分などの栄養が足りなくなる?
1 母乳は完全栄養
【6ヶ月までは母乳だけで】
初乳と成乳の成分に違いはありますが、その後は何年たっても変わりません。母乳の栄養分が薄まることはなく、免疫成分が少なくなることもありません。
生後6ヶ月までの赤ちゃんにとって母乳は完全栄養で、他に何も必要としません。ですから、6ヶ月間は母乳のみを与え、その後、離乳食を少しずつ与えながら母乳を続け、母子の望む限り母乳を飲ませるのが最も適した栄養方法となります。
【6ヶ月を過ぎると不足する栄養が生じてくる】
赤ちゃんの成長に伴い、発育に必要なエネルギーが増えてきます。母乳だけで足りなくなってくるものを離乳食で補うことが必要です。(最近では「補完食」とも言います)エネルギーの他には特に鉄分が不足しがちです。また、厳格な菜食主義や、食事制限を行っている人では、赤ちゃんのビタミンB群欠乏が見られたという報告があります。
【鉄分】
妊娠後半期に鉄の貯蔵を行えた正期産児では、成長に必要な鉄分は十分にあります。早産児、低出生体重児では、この貯蔵が少ないので注意が必要です。正期産児でも6ヶ月を過ぎると貯蔵分では足りなくなってくるので、やはり離乳食の開始が必要です。
母乳だけしか与えないと貧血になる場合があります。貧血状態が続くと、栄養不足による認知能力低下、運動障害が生じることが心配されます。
誤)1歳でも、2 歳でも、母乳だけでよい。
正)1 歳でも、2 歳でも母乳を続けてよい。ただし、鉄分や他の栄養素は不足してくるので、補う食べ物が必要。
なお、「フォローアップミルク」は必要なものではありません。母乳中の鉄分濃度は低くても、吸収率は人工乳の5倍です。
また、お母さんが貧血でも母乳の鉄分は減りませんが、反対にお母さんが鉄剤を飲んでも母乳の鉄分は増えません。
2 補完食(離乳食)
離乳食というと、「母乳をやめていく」というニュアンスがありますが、補完食は、「補って完全にする」という意味です。母乳だけで足りないものを補う、まさに母乳継続の助けになる用語ですね。
【食事のコツ】
・母乳の制限はしない
育児書には「時間を決めて回数を減らす」とありますが、今まで通りで大丈夫です。授乳を制限すると、乳腺炎など母乳トラブルのもとになります。
・無理しない
必ず食べるようになりますから、あせらないこと。たとえ「ふりかけ御飯しか食べてくれない」としても、小学生になってまでそのままの子はいません。母乳育ちの子どもは、かむ練習ができているので、比較的かための食事を好むことが多いです。歯ごたえを変えると食事がすすむことがあります。
ほんの少ししか食べなくても、大丈夫です。食べる量には個人差があります。お腹がすいていないという理由で食べないこともあります。まだそれほどエネルギーを必要としていないのかもしれません。身体的に食べる準備ができていない子どももいます。アレルギーが隠れていたり、消化酵素の働きが不十分だと、子どもは食べる時期を遅らせて体を守ろうとします。
子ども一人だけで食べさせようとすると、食べないものです。保育園では食べるけれど家では食べない、という場合です。家族で食卓を楽しく囲む、我が家の味を紹介するということから始めましょう。
3 離乳の完了
離乳食をすすめていくと母乳はやめなければ、と思うでしょうか?実は離乳の完了とは、「主なエネルギーを母乳以外から摂っている」という意味です。離乳イコール母乳をやめる、と考えなくて大丈夫です。音楽に例えると、「主旋律だったものがサブに回って演奏を続けている」というイメージですね。
母乳を続ける大きなメリットのひとつとして、感染症の予防があります。また、子どもの体調が悪くて食欲がないときも母乳は飲めることが多く、重症化を防げます。脱水で点滴をしなくてすみ、病気からの回復が早くなります。
授乳をやめてしまうデメリットもあるのです。
<母乳110番から>
「離乳食」と「卒乳」の相談は、とても多いですが、複雑にからみ合っていることがよくあります。
「離乳食のことでお聞きしたいのですが」というご相談のほとんどは「じつは、おっぱいばかり飲んでいるのが心配で」「そろそろ卒乳しなくてはいけないのに踏ん切りがつかなくて」「周囲の『もう止めないとおかしい』攻撃にまいっている」「授乳に疲れてしまって、いいかげんやめたい」など、卒乳に関する悩みです。
これに「次の子問題」(次の子を妊娠したいが、今の授乳を自然卒乳したいので迷っている)が加わり、さらに悩みを深める人が多いのも特徴です。
母乳を続けていると虫歯になるって本当?
むし歯の原因
菌、歯、食事の3つから考えよう。
・ミュータンス菌
①砂糖からグルカンを作り、歯に付着して増殖する。
②ほかの菌とともに歯垢(プラーク)を形成。
③プラークの中でミュータンス菌は砂糖、ブドウ糖、果糖から酸を作る。
母乳に含まれる乳糖から酸は作られない。
乳糖が分解されてできるブドウ糖は酸の元になる。
・脱灰と再石灰化
①酸がエナメル質を溶かす。(脱灰)
②唾液中のカルシウムが修復する。(再石灰化)
③睡眠中は唾液分泌が低下する。
エナメル質が溶かされても、数十時間かけて修復される。
脱灰が進むと、むし歯になっていく。
・糖の種類
①ショ糖:二糖類(ブドウ糖と果糖 )
ミュータンス菌は砂糖からグルカンと酸を作る。
②乳糖:二糖類(ブドウ糖とガラクトース)
分解されたブドウ糖からミュータンス菌が酸を作る。
③キシリトール:糖アルコール
ミュータンス菌は利用できない。
むし歯のできやすい状況
例)ほ乳びんでスポーツ飲料やジュースを与える。
上の歯中心に、長い時間、糖にさらされる。
例)歯みがきしないまま、夜間の授乳をする。
上の前歯の裏は母乳が停滞しやすい。
夜は唾液分泌が少ない。
むし歯の予防
①歯が生えたら
・1日1回はしっかりみがく。
歯垢を取る。
上の前歯、歯と歯の間、かみ合わせを重点的に。
②食事の内容
・砂糖、液体の糖は減らす。
みりん、めんつゆなどの調味料にも入っているブドウ糖果糖液糖に注意。
液体の糖は、歯の隙間に入って、みがいても残る。
・歯の間に入りやすいものを避ける。
例)あめ、チョコレート、クッキー、ジュースなど。
③糖分の取り方
・だらだら飲食はしない
再石灰化には 40〜50時間かかる。
甘いものは週1回が望ましい。(無理ですよね)
時間を決めて食べる。食後に食べる。
授乳している間、生理は来ないはず?
生理の再開
無月経は、次の妊娠を遅らせるホルモンの働きによるものです。(プロラクチンの上昇がゴナドトロピンを抑制し、排卵がおこらない)
再開の時期は個人差が大きく、産後2ヶ月で生理が来る人も、2年以上来ない人もいます。自律授乳をしていると、平均14.6ヶ月で再開すると言われています。
体への影響
産後6ヶ月未満の無月経で、母乳だけしか与えていない場合は、避妊に役立ちます。
8ヶ月を過ぎると、妊娠する可能性がでてきます。卒乳しなければ、妊娠しないわけではありません。
長期の無月経で妊娠希望の場合は、授乳を継続するかどうかを検討します。卒乳後3ヶ月以内で月経が再開することが多いです。
骨粗しょう症が心配と言われますが、実際は授乳中の骨密度は一時的に減るだけで、その後の骨密度は元に戻るか、やや高い状態になります。
生理中の授乳
生理中に授乳すると、疲れやすい、出にくいと感じる人もいます。
出なくなる、まずくなるなどと言われることもありますが、根拠はなく、母乳が減ることはありません。
ただし生理の前後ではホルモンの変動があるために、赤ちゃんの飲み方がいつもと変わるかもしれません。
生理が再開した後、授乳回数やパターンの変化はあり得ますが、母乳が止まる心配はありません。
妊娠中の第1子への授乳は続けても大丈夫?
初期の流産とは無関係
初期流産の原因の多くは、受精卵の問題で、ほとんどは染色体異常によるものです。妊娠初期の授乳と流産率の関連はなく、乳頭刺激で子宮が収縮するのは、妊娠24週以降です。
すぐにやめる必要はない
第2子妊娠中に自然卒乳する例は60~70パーセントです。
妊娠初期では子宮収縮は起きないので、急いで授乳をやめる必要はありません。急にやめると、上の子が不安定になることがあります。
継続かを考えるべきケース
授乳の継続を検討する必要があるのは下記の場合です。
a)前回の妊娠が流産や早産だった。
b)授乳すると出血、腹痛、子宮収縮がある。
c)母の体重が減り続ける。
アドバイスするときの注意点
お母さんの気持ちを第一に考える。お母さんはどうしたいのか?
・上の子どもの寝かしつけに必要
・気持ちは続けたいが不安
・他の理由で卒乳を考えていて、妊娠がきっかけになると思った
など、いろいろな場合があります。
ご家族など、周囲の人の受け入れ状況も確認しましょう。妊娠したらやめるべきと考えている人が多いからです。
医療者から夫や家族への説明があると、授乳継続することを理解してもらえるかもしれません。
上の子に授乳するのがいやな気持ちになるお母さんもいます。より小さい子どもを守ろうとする自然の働きなので、不思議ではありません。ご本人が納得して決められるように、支援しましょう。卒乳の時期や理由は人それぞれです。おっぱいカップルの別れどきは、母子どちらかの気持ちが離れた時でよいのです。(彼氏と別れる時と一緒です)
薬を飲む間、授乳を中止してくださいと言われましたが?
投薬イコールおっぱい禁止、でしょうか?母乳は水道の蛇口のように簡単に止めることはできませんよね。
ダメと言われる理由
薬の情報は添付文書に載っていますが、母乳に移行しないものでも禁止と書いてあります。安全性に関するデータがなければ、授乳可能とは記載できないからです。授乳中止と言われるのは、赤ちゃんへの悪影響があるからではなく、データがないためなのです。
授乳可能な薬
ほとんどの薬は授乳中でも使用可能です。 お母さんが飲んだ薬は母乳に移行しますが、その割合はとても低いことが多いのです。
つまり、赤ちゃんに効果が現れる量に届かないので、授乳は可能と判断されます。 以下のよく使われる薬は、赤ちゃんへの影響は少ないとされています。
・鎮痛薬 ・抗ヒスタミン薬 ・抗アレルギー薬
・抗菌薬 ・抗ウイルス薬
・気管支拡張薬 ・咳止め ・下痢止め
より安心して使うには
薬を飲む場合は、本当に必要な場合だけとし、より安全な薬を選択するようにしましょう。風邪など自然に治る病気で症状が軽ければ、治るのを待ってもよいのです。
しかし、治療が必要な病気の場合に薬を使わないのは、お母さんの健康を損ねます。飲むタイミングを調節するのもよいでしょう。授乳してから薬を飲むと、次の授乳までに薬の血中濃度が下がり、子どもに移行する量をさらに減らすことができます。
注意が必要な薬
・抗がん剤
・放射性物質
・麻薬
・精神神経疾患、不整脈の一部の薬
・母乳分泌を減らす薬 長期に使う場合は、専門家とよく相談しましょう。
片頭痛治療薬
高プロラクチン血症治療薬
排卵誘発薬
ピル(産後6ヶ月以降は使用可能)
※参考:妊娠と薬の情報センター
質疑応答
<参加者からの質問>
「妊娠前に飲んでいた精神科の薬を止めてしまい、8ヶ月我慢していたが、産後1ヶ月のとき、がまんできずに飲んでしまった」という相談が、以前ありました。
<麻里先生の回答>
注意すべき精神神経系の薬に、母乳に移行しやすい炭酸リチウム(リーマス)があります。それ以外は急いで中止する必要はありません。急に薬を止めることで病気の悪化などデメリットがあるかもしれません。
この相談者さんの場合、精神科のかかりつけ医に聞いても「授乳中のことはわからない」と言われてしまったとのことですが、妊娠中の経過もあると思いますし、出産した産科の医師に相談してはどうでしょうか?
薬を飲まないことで、お母さんの具合が悪くなれば、授乳もできないし、子育てもできませんよね。
薬の名前から、授乳中に使えるか使えないかを調べることができます。より安全な薬に変更ができないか、検討することができます。
赤ちゃんへの影響については、赤ちゃんがぐったりしている、眠りがち、元気がない、などの状態があるかどうかを観察します。大きな病院では赤ちゃんの血中薬物濃度を測ることもできます。
追記:くすりの情報サイト 妊娠と薬情報センターやLactMedで投薬の可否は調べられます。
<参加者からの質問>
「アルコール摂取に関する質問も多いのですが、同じような感じでしょうか。」
<麻里先生の回答>
たとえばビール350〜500cc 飲んだ場合、約1時間半で代謝されます。お母さんが酔っているときに授乳すれば、母乳に含まれるアルコールが赤ちゃんに移行します。酔いがさめていれば、移行しないでしょう。国によっては、ビールは母乳分泌によいと母親にすすめるところもあります。毎日多量に飲酒するのは健康に影響しますので、避けましょう。
<参加者からの質問>
「産後すぐや、授乳中にカラーリングをしていいかどうか?」という質問がありました。影響はあるでしょうか?
<麻里先生の回答>
爪のマニキュアのように、体の表面への加工は問題ないと考えます。
最後に・・・
母乳育児は自然な母と子の生活の一部で、本当はほとんどの人が経験できるものです。 そしてお母さんと赤ちゃんの両方にたくさんのメリットがあります。
けれども実際には、何と多くの壁や落とし穴があるのでしょう。医療者も全員が頼りになる訳ではなく、また見ず知らずのおばさまから不見識なお言葉をもらったり、先輩ママが横から手を差し伸べてくれるのかと思いきや、変な脇道に連れ込まれたり。それでも!母乳育児をしたいお母さんはたくさんいて、これがうまくいくと楽しいうえに楽なものですから、みんなでやってみない?やってみようよ、とサポートしたい(ここが大事、指導ではなくってね)お母さんもたくさんいます。母乳110番で、そんなお母さん達のお手伝いができることを感謝しております。 これからも、よろしくお願いいたします。
執筆:村上麻里、
絵:竹中恭子、企画&編集:母乳110番
村上麻里 母乳110番顧問
新潟大学医学部卒業。産婦人科専門医。
新潟大学医学部付属病院、市立甲府病院、刈羽郡病院、県立がんセンター新潟病院など関連病院勤務ののち東京都内のクリニックに勤務。産む人が主体となるお産の支援、母乳育児支援と子宮がん検診、ピル、更年期障害など女性のヘルスケアを診療の中心とする。
私生活では三姉妹の母。「三人ともそれぞれ違った形での出産や母乳育児を行ったのは産婦人科医としておもしろい体験だった」と語る、自称“おっぱいマニア”。
*この資料は、2013年8月に行われた「母乳110番相談員&研修生のための勉強会」の記録を元に2020年9月、加筆修正していただきました。