『女性と助産師のパートナーシップ ―実践のためのモデル』

『女性と助産師のパートナーシップ ―実践のためのモデル』

カレン・ギリランド、サリー・ペアマン(著)
ドーリング景子(訳)
(日本助産師会出版)

日本のお産環境に対して今私たちが抱いている危機感を、
40年前にニュージーランドで抱いた女性と助産師がいた!改革を実現した驚異の歴史とパートナーシップ

推薦者:西川直子

1990年代から提唱された「女性と助産師のパートナーシップ」。

ニュージーランド助産師会から出版されたこの著書は、世界中の助産師のバイブルのような存在で多言語に訳されていましたが、このたび2022年2月に日本助産師会から出版されました。

この本では、ニュージーランドの出産システム「LMC制度」が実現するまでの歴史、そして「女性と助産師のパートナーシップ」の独自性について、分かりやすく書かれています。

私が特に驚いたのは、1980年代ごろのニュージーランドの状況が、現在の日本そのものでは
ないか、と感じたこちらの文章でした。

‐他国と同様にニュージーランドでも出産の医療化が女性に与えた影響は、女性の力の喪失と
母性の知識の剥奪でした。(12p)

‐医師が管理する出産の増大、出産サービスの病院への移行、そして助産教育を看護に組み入
れたことは、助産師のアイデンティティ喪失の主な原因になりました。助産師は出産サービスの細分化によって女性との関係(パートナーシップ)を失い、それに伴って出産は自然なものだという信念と理解を失いました。助産師としての知識や技術は、医学によって産科看護へと再構築されました。その結果、助産師は結果に対する責任と説明責任を失い、看護とは別の専門職としてのアイデンティティを失い、なによりも、地域社会で尊敬される出産の守護者としての地位を失いました。(13p)

‐1986年に産科規則が変更されるまで、助産師の大半は、自分たち専門職の終焉を目の当たりにしていることに気づいていませんでした。(14p)

‐ニュージーランドにおける助産の消滅は、産科の様相を取り返しのつかないほど変えてしま
うでしょう。出産への医療介入の割合は急上昇し、帝王切開率は20%になるかもしれません。慣例的なエコー検査、会陰切開、胎児モニター、陣痛誘発も行われるでしょう。(15p)

私が日本の周産期環境に対して強く抱いている危機感を、今から約40年前にニュージーラン
ドで抱いた女性と助産師がおり、そして改革を起こすことができたという歴史に大きな驚きを覚えました。同時に現在の、日本の助産の状況にあらためて危機感を感じました。

「女性と助産師のパートナーシップ」について、さらに紹介は続きます。

‐女性自身が出産過程における権威ある知識人(18p)
‐看護師の通常の内省が自ら実践を振り返ることに対し、助産師は定義上、女性と協働して内
省を行わなければなりません。(21p)
‐(助産師は)社会のどの専門職もそうであるように人の命に対する大きな責任を負っていま
すが、責任は出産する女性にあり、それは自身や赤ちゃん、そして出産に対する責任を引き付けるという女性の権利であると常に信じています。それは簡単なことではありません
...(36p)

このように、女性と助産師は対等であり、お互いにエンパワーメントし合う存在であるとい
うことが、この本の中に何度も表現されています。助産師が女性を「助ける」「救う」「支える」ということではなく、お互いがお互いに必要な存在であるということ、パートナーシップとは何か、を追求する言葉の数々に、心からの深い感動を覚えました。

「女性の大多数が助産師との関係に満足している」(74p)というニュージーランド。

翻訳者は「出産ケア政策会議」共同代表のひとりであるドーリング景子さん。出産ケア政策会議は、日本におけるLMC制度の実現を目指しています。

Women need midwives need women(女性には助産師が、助産師には女性が必要)(16p)。

今こそ私たちは、この本でニュージーランドの歴史と「女性と助産師のパートナーシップ」について学び、女性と助産師が共に手を取りあって、行動を起こす時が来たといえるでしょう。

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