『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!~ママの社会進出と家族の幸せのために~』

『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!~ママの社会進出と家族の幸せのために~』

前田晃平(著)
(光文社)

「幸せに生きてもらわなければ、困る」
愛娘への想いダダ洩れパパが子育てデビュー夫婦がぶつかるリアルな社会問題をガチトーク!

推薦者:ちかぞう

タイトルだけ聞くと、意識高い系のパパがヒーローよろしく旗を振ってイクメン道へ導いち
ゃうイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

でも、まんまと騙された(いや、単に私がヒネくれているだけだけど……)。
表紙をめくればそこには、キラキラした子育て理想論より、もっとおっぱいとミルクと汗と
涙と鼻水にまみれたエピソードがぎっっっしり。

「我が子の幸せのために、私たちに何ができる?」という未知のミッションに真正面から向
き合い、かつ悩める同志(?)と語り合う気満々! 雰囲気としては“学生時代の悪友と子育
てについてガチトーク”に近いというか。

例えば産後に夫婦喧嘩が勃発しまくる原因について、前田さんが頭をウンウン捻りながらこ
ぼす。

「私がよかれと思って言ったりやったり(あるいはやらなかったり)することが、なぜか妻の地雷を踏み抜くという怪奇」には「そうなんだよぉぉおおお」と、3児の母である私も魂の奥底から叫びました。

前田さんご夫婦はママの実家をも巻き込んで“怪奇”を解きほぐしてゆくワケですが、かと
いって決してママ寄りなトークだけではなく。

「日本の男たちは家事育児をしないのではなく家事育児がしたくてもできないのではないか
」とパパたちの苦しい胸の内も代弁。子育て世帯が置かれる現状を、パパを庇うのではなく
(←ココ重要)社会問題として徹底的に読み解いてゆきます。

これならママもパパも辛さや怒りをシェアしながら「子どもたち世代のために、何ができる?」と同じ方向を向いて、行く手を阻む山や谷の姿をとらえ直すことができそう。

さらにハッとさせられたのは、世のママたちへ向けて「育児に関してママにできてパパにできないのは、母乳をあげることくらいのものです。それ以外のことは、なんだってシェアできます。健康な大人であれば、やれないはずがありません」な~んてメッセージも。

繰り返しになりますがコレ、パパにあてたものではなく、ママに対する言葉なんです。つま
り「ママたちも『だって、お母さんだから』に縛られていませんか? パパもですけど、ママもジェンダーの呪縛から解き放たれましょうよ」と。

この突っ込みには「パパに任せるの不安だし、私がやっちゃうか!」となりがちな自分も、正直ギクッとさせられました……。

子育てデビューするなりパパとママが避けて通れなくなるアレやコレやについて、前田さん
はドラクエの“村人A”ならぬ“パパA”として、片っ端から疑問を呈し、背景を探ってゆき
ます。

・パパの育休、どうする?
・産後ママの死因トップは自殺!
・産後うつはパパも10人にひとりがかかる!
・ママが働くと少子化が進む?
・「もうひとり産んで」のプレッシャー!
・“伝統的家族”こそ、家族のあるべき姿?
・婚外子も特別養子縁組も夫婦別姓もなんでダメ?
・子どもを産んで育てるのは、自己責任?
・子育てで人を頼るのは悪いこと?
・保育教育現場の性犯罪、防げないの?

ひとつひとつ、それぞれ複雑過ぎる事情がこんがらがってはいるけれど、そこはNPO法人フローレンスのメンバーとして日頃から苦境にあるママやパパの声を、お役人さんや議員さん、果ては大臣室にまで乗り込んで届け続けている前田さんだけあって、説明が分かりやすくてサクサク読める!

データや図解もたっぷりで、本作りの業界の片隅にいる自分としては「デザイナーさん、い
い仕事してるなぁ」なんて感じたり。

この国ニッポンで、愛する我が子に「幸せな人生を手渡したい!」と切実に願いながら、パパママが直面させられる社会問題の数々。「うまくいかないのは俺が/私が悪いの?」と真っ黒な穴へ落ちていってしまいそうな時、この本はそっと「それは違うよ」「人に頼っていいんだよ」「おかしいって言っていいんだよ」と手を差し伸べ、国内外・新旧のエビデンスを示しながら力いっぱい寄り添ってくれます。

パパやママが「ひとりじゃない」って実感できる、少なくともそれだけで、この本は尊い。

最後の最後に「母乳110番」に絡めていえば、パパとママが授乳方法の選択をきっかけに陥りがちな不仲(!)についてもガッツリ触れているので、そちらも参考になること請け合いです☆

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