『おっぱいがほしい!―男の子育て日記―』
樋口毅宏(著)
(新潮社)
“子どもにもパートナーにもいつもニコニコ”なんてできねぇよ!と吠えたいワンオペ族のための劇薬エッセイ
推薦者:ちかぞう
作者の樋口毅宏さんに、「母乳110番のウェブサイトで『おっぱいがほしい!』をご紹介したいのですが」と、ご相談してみたところ、「こんなちゃんとしてそうなサイトに、あんな暴露本が紹介されていいのでしょうか。。」と、即お返事がありました。
が。“暴露本”だからこそ! 叫び出したい毎日を生きるママパパ諸氏とシェアしたいのです。
どの程度の“暴露本”なのか、ここでざっくりご説明すると。
『おっぱいがほしい!』は小説家の樋口さんが、超絶多忙なタレント弁護士・三輪記子さん
との間に授かった一文くんを、主夫としてほぼワンオペでおよそ1歳まで育て上げた日々について綴ったものなのですが(ちなみに一文くんが6歳になった現在も主夫生活は継続中)。
暴言上等、泣き言炸裂、そしてリビングの本棚に置くのは憚られるほど、下ネタ満開!
※そんなこんなで以下にも下ネタが紛れ込みがち、苦手な方はご注意ください※
書いたご本人がおっしゃるとおり「母乳110番」のウェブサイトにおいて、極めて異端な部類であることは疑いがありません。ましてや樋口さん、ベストセラーとなった『タモリ論』等のエッセイでも知られていますが、その真骨頂はエロ! グロ! バイオレンス! がほとばしるハードボイルド小説の作家さんですし。
でも、でもね。
樋口さんの子育てトークに、キレイごとは清々しいまでに一切なし。なんなら三輪さんとの
夫婦関係についても、微塵の忖度もなし。どれくらい振り切れているかというと、目次から10個だけ拾ってきて、このレベル(↓)
・三輪記子ヤリマン伝説
・俺はそろそろ浮気をすると思う
・下痢騒動でわかったこと
・俺は使い勝手のいい家政夫じゃない
・いつかこの子もオナニーをする
・「どんなに疲れていても帰ってきたら笑顔で迎えろ」だと?
・子供の体調が悪くなるたび、気を揉むのが親というものなのか
・「あんたたちは今に別れるんやろうけど」と義母は言った
・夫は雑用係じゃない
・結婚して失敗したと思った瞬間
ところで私は育児エッセイやマンガが大好きで、子どもたちを寝かしつけた後「でもすぐに
お布団から抜け出すと起きちゃうからなぁ」なんつってスキマ時間をほじくり出しては、川の字の真ん中でしばしの読書タイムを楽しむのですが、スマホの光にぼんやり浮かび上がる散らかり放題の6畳間で小さな寝息を聴きながら「それにしたって自分は、エッセイやマンガに登場するママみたいに“子どもにもパートナーにもいつもニコニコ”な感じで育ててあげられていないよなぁ」と、ほかのお宅のまばゆさに性懲りもなく凹む夜もあったりして……。
そんな時、ワンオペ主夫の赤裸々な“暴露話”に枕の上でヘドバンよろしく頷きまくり、大
きな音は立てられないから喉の奥でヒィヒィ笑って、さらには「世の中にはスンゴイ夫婦もいるもんだ」と毎度感心して、日付が変わる頃にページを閉じればカラッと爽やかな心持ちで眠りにつくことができるのです。
で、あられもないご紹介にドン引いている方へ向けて後出しながら精一杯のフォロー(?)
をすると、三輪さんが弁護士として困っている人たちのために(それがたとえ留置所から助けを求めてくる元セフレでも!)日々奮闘しているのを、樋口さんがメチャメチャ尊敬しているのは言葉の端々から伝わってくるし、三輪さんは三輪さんでこの本が出版された際に自腹で100冊も購入して配り歩いたそうだし、何よりお二人の一文くんへの愛情は激アツだし。
つまり、何が言いたいかというと。
『おっぱいがほしい!―男の子育て日記―』には下ネタもいっぱいだけれど、ラブとリスペ
クトもいっぱ~いなのです。
そして私は今夜も! 夜更けの硬い小さなお布団の上で、とびっきりご機嫌な“暴露話”に
忍び笑いを洩らすのでした。愛されたいと願っているパパも、融通のきかないママも、下ネタへの免疫さえあれば、ぜひご一緒に☆