① 不足感・不安について

不足感・不安について:カルテ1

生後1ヶ月半の赤ちゃんがいます。母乳不足のような気がします。赤ちゃんはくわえて飲
んでくれるけれど、途中からうなり始め、引っ張ったり離したりして、きげんがわるくな
ります。

母乳110番より

うなり泣きは、飲みすぎのサインと言う意見もありますが、引っ張ったり離したり、パクパク。心配ですね。

まずは赤ちゃんに乳輪部までしっかり深くくわえてもらって、おっぱいの奥からわいてくる母乳を飲んでもらいます。うなったり引っ張ったり、くちゅくちゅしてもごくんごくん飲む様子がなかったりするときは、ひとまず、一時的に5分5分くらいのイメージで遊び始めたら授乳を切り上げる感じにしてみてはどうでしょう。落ち着いたら、もっと長い時間、授乳して大丈夫です。

ただし、頻回授乳(1日に10回以上、こまめに授乳する)をします。
赤ちゃんの胃袋はとても小さいので、いっぺんにたくさん飲めません。生後6ヶ月くらいの子でも1回の量は60ccくらい、ちょこっと飲んで10ccのときもあります。少量をちょこちょこと回数を多く飲むことで、1日の総量が足りているのが母乳育児の姿だそうです。
赤ちゃんが、パクパクだけではなくモゾモゾして探すようなしぐさをしていたり、ちょっと欲しがっているような気がしたら、時間を気にせず、いつでも授乳してみてください。夜中も2回は授乳し、1日を通しての回数をかせぎます。
また、しめつけるタイプのブラジャーではなく、ゆったりしたブラ(ノ―ブラでもよいくらいです)にするのもおすすめです。

不足感・不安について:カルテ2

生後2ヶ月の赤ちゃんがいます。混合育児をしています。足りているのかどうか知りたい
です。体重は1日あたりの増え方が25~30グラムくらい。1回の授乳がおっぱい左右10分ず
つ、全部で20分、そのあとは、口を離して泣くのでミルクを90cc足しています。

母乳110番より

お話を聞いていて、むしろ「飲みすぎではないか?」と思いました。
粉ミルクは、飲んでいる間、味も、濃さも、成分も同じです。でも、母乳は飲み始めと飲み終わりとで、ふくまれる脂肪の量がちがいます。最後の方は濃い母乳になって、自然と満腹感を感じて飲み終えられる作用があるのです。
そのため、粉ミルク育児や混合育児では、粉ミルクを必要以上に飲ませすぎてしまう場合があります。粉ミルクの缶には驚くほどの量が書いてあるので、あげる大人も違和感がないのですが、実際には飲ませ過ぎとなっていて、おなかが張って苦しくてぐずったり、うなり泣きをしたり、消化不良による便秘の原因になっていることがあります。

また、ほ乳ビンのゴム乳首は、お母さんのおっぱいの乳首と、形も吸い方もちがいます。ゴム乳首のほうが、がんばって吸わなくても、かんたんに出てくるのです。少し吸えば、大量に流し込まれる飲み方に赤ちゃんが慣れてしまうと、お母さんのおっぱいを吸うのをいやがることがあります。「乳頭混乱」という名前がつけられているくらい、よくある現象です。
お母さんのおっぱいは、あごをつかって吸うことで母乳が出ます。そのため、力を使います。でも、あごの力を使うことで、赤ちゃんはあごが発達して将来、歯並びがよくなって虫歯の予防になります。かむ動きと同じなので、離乳食(補完食)の事前の練習にもなっています。かむ動き(こめかみが動いています)は脳に刺激がいき、脳の発達にもいい影響があるそうです。
お子さんは、乳頭混乱を起こしかけている可能性があります。その場合、ほ乳ビンをいったんやめて、スプーンやコップで授乳する方法があります。ソフトカップという、スプーンにほ乳ビンがついたような道具もあります。「カップ授乳」「コップ授乳」で検索すると動画が出てきます。
また、以下の方法を試してみてください。
・まずは粉ミルクを20ccくらいあげて落ち着かせてから、赤ちゃんの口を大きく開けて深く母乳をくわえさせてしっかり飲ませます。母乳のあとに粉ミルクを足すのはナシ。これを1週間くらい続けます。
・慣れてきたら、母乳を先にあげて、粉ミルクはあとから飲ませます。粉ミルクを足す量は1回80cc以下にして、少しずつ減らしていき、30ccくらいまでにしていきます。
・その授乳方法に慣れて粉ミルクの量が30㏄まで減ってきたら、ミルクを足すのを夕方の1回だけに限定します。

「その方法でやってみます」とのことでしたが、その後2回お電話がありました。
1回目は、粉ミルクの量が減ってから便秘が解消したこと。
でもなかなか80cc以下にできず、スプーン授乳を検索してみたらあったので試してみたこと。スプーン授乳は時間はかかるがゴム乳首での飲み方を忘れてくれたのか、母乳の吸いつき方が上手になってたっぷり飲んでいるような気がすることを報告してくださいました。
2回目のお電話では「夕方ミルクを多めにあげることで夜ぐっすり眠ってもらってラクしたいと思っていたのですが、すっかり母乳オンリーに慣れてしまい、夜も2~3回飲ませています。思っていた授乳生活とはちがったわけですが、添い乳を覚えてからは夜中の授乳もさほど苦にならず、粉ミルクを作る大変さからも解放され、順調な母乳育児をしています。
最初に相談したときは不足かと思っていましたが、足し過ぎの可能性も疑ってみてよかったです。ありがとうございました」とのご感想をいただきました。

不足感・不安について:カルテ3

生後3ヶ月の赤ちゃんがいます。混合育児中。生後1ヶ月くらいから、おっぱいをいやがり
ます。おっぱいを近づけるだけで拒否されてしまい、ほとんど吸いつかないです。

母乳110番より

おっぱいを飲んでほしいのにおっぱいをいやがられて、泣かれるなんてつらいですね。でも大丈夫、そういうママはたくさんいますし、おっぱいを好きになってもらう方法があります。
赤ちゃんはあなたのおっぱいがいやなのではなく、ほ乳ビンのゴム乳首の吸い方に慣らされてしまい、「乳頭混乱」を起こしているだけなのだと思います。
ゴム乳首とちがい、人間のおっぱいは吸うときに40倍ものあごの力を必要とするそうです。だから赤ちゃんは、おっぱいをくわえたときに「これじゃない!(すぐに)出てこないじゃないか!」と泣くわけです。それを回避するには、赤ちゃんに、ゴム乳首でのかんたんな飲み方を忘れていただく以外にありません。少しコツがありますが、よかったら試してみてください。

・粉ミルクは、少しずつ減らします。(できれば80cc以下、徐々に30ccくらいまでもっていく)
・先におっぱいを吸ってもらう。しばらく吸わせて、どうしても泣く場合は粉ミルクをあげる。「先におっぱい、あとから粉ミルク」、この順番を守ってください。授乳間隔があまり空かなくてもいいです。
・また、夜の方が赤ちゃんが寝ぼけていて吸いつきやすいです。夜間授乳はできるだけ、おっぱいのみにします。昼間も、赤ちゃんが眠そうなときに吸わせると、おっぱいを吸ってくれることがあります。
・粉ミルクを足す時は、可能ならスプーン授乳やカップ授乳にして、ゴム乳首(ほ乳ビン)はできるだけ使わないようにします。

たくさんのママたちがこの方法を試して、混合から母乳だけになっています。3ヶ月ならまだまだ母乳を復活できるケースが多いです。
きっと美味しいおっぱいだと思うので、自信を持ってくださいね。なるべくママの身体を冷やさないで、肩、足首などを温めると、おっぱいによいです。肩をまわして血流をよくする、あたたかい番茶やほうじ茶、おみそ汁などを飲んでおなかを温める方法もおすすめです。

「まさか、ゴム乳首に慣れてしまっていたなんて。きっとそうですね、そんな気がします。母乳1本にしたいので、やってみます。」とのことでした。

不足感・不安について:カルテ4

生後6ヶ月の子と、上に1歳の子が2人(双子)います。
今、混合育児です。母乳のみにしたい(上の2人は母乳のみでした)と思っています。

母乳110番より

「だれも『母乳をあげたいよね』、と言ってくれない」、私もそうだったので身につまされます。「母乳をあげたい」なんて、ごくふつうの自然な気持ちだと思うのですが、わかってもらえず、悲しいですよね。
「母乳をあげたい」と言うと、なぜか母親のエゴのように言われたり、「あなたの母乳へのこだわりのせいで赤ちゃんが成長不良になる」なんて言われて責められたり。
そういうときは、できれば、なるべく気にしないようにしましょう。母乳育児をしたい人にとっての、母乳への否定的な意見は世間に山ほどあります。そうした逆風をまともに受けていては身がもちません。また、赤ちゃんを抱きながら説明したり、議論したりするのも大変ですよね。
「ご心配ありがとうございます」と言って気持ちだけ受け取り、無理して言い返さずに右から左に聞き流してもいいです。
自分が理解していることが、自分の支えになります。母乳育児の本を読んだり、母乳講座などに参加してくわしく勉強してみるのも面白いかもしれません。
お子さんは6ヶ月なので離乳食(補完食)をお考えなのですね。「補完食」という呼び名があるのですが、「母乳や粉ミルクをあげながら、食べ物を少しずつあげていく」やり方です。もしお子さんが食べ始めても、母乳はやめなくてよいです。母乳を続けたいですよね。

この方は、このあと、母乳110番のセミナーに参加してくださいました。
「母乳の出る仕組みや、不足を見分ける方法、栄養のことを聞くことができてから義母も理解してくれるようになり、毎日が明るくなりました。次は研修に参加して、私のように悩んでいるママを助ける相談員になりたいと思っています」と、うれしいお便りをくださいました。